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藤沢海辺一匹魚


by yoyoyao
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『冬のユリゲラー』 2005年 8月9日(火)  第一話

第一話

テレビから流れるオープニング映像。今、まさに『超能力激論バラエティー 冬のユリゲラー』の放送が始まった。

クリスマス・イヴの夕暮れ。喫茶店「カフェ・ド・念力」で、その番組を見つめる筧、三宅、井手。筧はつまらなそうにリモコンでテレビを消した。「観ないの?」と問う井手に、筧は「観るんですか?」と答える。くだらなすぎる番組を見る気になれない筧に、そのくだらなさが逆に面白いと答える井手。この番組は毎週世界の超能力者が紹介され、その能力が本物かどうかをスタジオで真剣に議論する内容だという。過去に紹介された中国の透視少女は、封筒の中に隠されたパンダの絵を6時間も見つめたあげく「風」という文字だと答え、その少女の母親が「風の下の部分と、パンダの口をつむいでいる感じが似ている」と言い張ったらしい。更に、中国のスプーン曲げの男が登場した時は、何時間も念じたにもかかわらず、そのスプーンを曲げる事ができず、男はスプーンをスタッフに触らせ、その熱さが自分のパワーだと答えたという。その本末転倒な展開がばかばかしいと、熱く語る3人。
「あれ今度、正月に特番やるんですよ。この前それの告知で、あなたの周りのびっくり人間を教えてくださいっていう謎のテロップが・・・」

その頃、安アパートの表には、バラエティー番組『冬のユリゲラー』女性AD桜井がいた。彼女はびっくり人間の取材でこの部屋を訪れていたのだ。

「カフェ・ド・念力」にコンビニの袋を持って店のマスター・早乙女が戻ってくる。彼はコンビニにコーヒー豆を買いに行っていたのだ。
「喫茶店で豆切らすって珍しいですよね」
「マクドナルドでパン切らすようなもんですからね」
と、つっこまれながらも笑顔の早乙女。と、そこへ「メリークリスマス!!」とクリスマスケーキを持って入ってくる河岡。お互いに自己紹介を終えて席に座ると、井手から「まさか本当に実現するとは思わなかったですよね」という言葉。ちょっと風変わりな彼らの正体とは・・・それはエスパー(超能力者)!!今日はそんな超能力者たちのささやかな超能力発表会だったのだ。他のエスパーたちの能力が気になって仕方がない面々は、出席者が全員集まっていないにもかかわらず、順番にそれぞれの超能力を披露することに。まずは井手のサイコキネシス。井手は電気製品を自在に操作する事ができる。取り出したゲームボーイのテトリスを筧にプレイさせるや、物凄い形相で力み始めた。すると、画面の上から落ちてくるブロックが棒ブロックばかり。さらに力むと今度はS字ブロックばかりが落ちてくるというなんとも地味な技。三宅はテレパシー能力を持っている。他人が考えている事を読み取るばかりか、逆にテレパシーを送る事もできる。筧は透視能力を持つ。井手と河岡のインナーシャツを透視し、それぞれがナイキのTシャツを着ていることを言い当てた。河岡もサイコキネシスを使う事ができる。差し出した手から気を送ると物が動かせるのだ。物置の扉を気で開けると、勢いあまった扉に、奥の荷物がけたたましく乱れ飛んだ。どうやら微妙な力加減が難しいらしい。盛り上がる一同を微笑ましく見守りながら、コーヒーを入れようとしている早乙女。と、入り口が開き、小山が入ってきた。料理の専門学校に通っているという小山もまた、エスパーの1人。皆から能力を見たいと言われ、小山はポツリと答える。
「あぁ、じゃあその、テレポーテーションができるんですけど」
軽い驚きの後、皆の動きが一瞬止まる。
「・・・いやそんな当たり前みたいに・・・」

安アパートでは、ビデオカメラ片手にびっくり人間の取材をするAD桜井がいる。

一方、路地裏では「カフェ・ド・念力」の地図が描かれたメモを片手にサングラスの男が歩いている――。


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from 「劇団演技者。」
by yoyoyao | 2005-08-11 15:13 | 翼事